保護責任者遺棄罪・不保護罪
(Wikiより抜粋)
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしない罪(刑法218条)。
客体
本罪の客体は「老年者、幼年者、身体障害者又は病者」であり、217条と文言は異なるが意義は同じであると解されている。
主体
刑法218条の「保護する責任のある者」(保護責任者)にどのような範囲の人間が含まれるか問題になるが、後述の保護義務の存在によって決定される。
保護義務
その発生根拠が問題になる。法令や契約などがこれに含まれるが、一定の行為(先行行為)を行った者についても事務管理や条理により保護義務が発生すると解されている。そのため本来保護義務を負っていなかったはずの者であっても、親切心で要保護者の保護を開始した(例、自室に引き取って看病した、病院へ連れて行くため車に乗せた)ために保護義務を負わされることもある。
行為
本罪の行為は「遺棄」及び不保護(その生存に必要な保護をしなかったとき)である。
錯誤
自分が保護責任者だという認識を欠くケースでは錯誤が問題になるが、事実の錯誤の問題か違法性の錯誤の問題かが講学上争いになる。
法定刑
法定刑は3月以上5年以下の懲役である(刑法218条)。
尊属遺棄罪の削除
かつて刑法218条2項に存在した尊属遺棄罪は、平成7年の改正により削除された。
遺棄致死傷罪
遺棄罪又は保護責任者遺棄罪・不保護罪の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断される(刑法219条)。
死傷の結果が生じた場合、結果的加重犯になり、219条によって処理されるが、結果に故意がある場合は、行為の態様によっては不作為による殺人罪(刑法199条)または傷害罪(刑法204条)が成立することもある。